「年収の壁」の具体策について

政府は「年収の壁」についての対策を開始すると発表しました。年収が一定額を超えると、パート・アルバイト等の短時間労働者は扶養を外れ、社会保険料負担等により手取り収入が減少してしまいます。いわゆる「年収の壁」を超えないように就業調整をする短時間労働者が「年収の壁」を意識せず働ける環境づくりのため、年収106万円と年収130万円の壁について10月から対策が始まりました。

■年収106万円の壁対策

「キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース」新設

キャリアアップ助成金に、社会保険適用時処遇改善コースが新設されました。社会保険を適用しても、労働者の手取が減らないように事業主が手当を支給したり、賃上げを行った場合等に事業主に助成されます。

申請人数の上限なしに労働者1人につき最大50万円が助成されます。

事前にキャリアアップ計画書を提出することが原則ですが、10月1日から1月末までに取組を開始する場合は、1月末までの事後的な提出も認められています。

この新コースは①手当等支給メニュー、②労働時間延長メニュー、③併用メニューと3つのコースがあります。

いずれのメニューも、社会保険適用後の手取額が減らないように手当の支給、賃上げ、労働時間の延長で年収を増加させることが要件です。

対象の労働者はすでに6か月間の雇用実績があり、10月以降に新たに社会保険に加入した者です。

■年収130万円の壁対策

10月から「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」が始まりました。パート・アルバイトで働く短時間労働者が130万円超えとなっても、事業主が一時的な収入増である証明書を発行すれば、国民年金・国民健康保険の保険料を負担することなく、引き続き扶養に入り続けることが可能です。

「一時的な収入増」とは、人手不足(他の従業員の退職・休職等)で残業時間が増加した、突発的な大口案件が入り業務量が増加した等が想定されています。

あくまで「一時的な収入増」を対象としているため、基本給の増額や恒常的な手当が新設された場合等は一時的な収入増とは認められない点に注意が必要です。

今回の対応は原則として連続2回までです。被扶養者の収入確認は年に1回実施される事が多いため、130万円を超えても扶養に入り続けられるのは連続2年までという事になります。

いずれの制度も2025年の次の年金制度改革に向けての暫定措置です。

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